5-2 「妻」の機能と「妾」の機能(129〜132)



筆者は石原千秋の「三千代との「愛」が燃え上がってゆく過程を描いたはずのこの小説(注『それから』)で、代助がたびたび藝者遊びをしていることがそれとなく描かれている」という指摘を確認する。石原の「代助が藝者を抱きながら「幻の三千代」を抱いていたのではないかという議論」には「「性行為」の相手と「純愛」の相手すなわち娼婦と淑女を二分する男の手前勝手な性のあり方を批判するフェミニズム批評」が影響しているが、「恐らく、大きな文脈のなかで見た場合、三千代との純愛という物語を代助が生きながら同時に藝者を抱くという行為は、むろんさきの「妾を置く」という発想をする代助と地続きであると同時に、「批評」によって「征伐」し去ることのできない男の性の真実がある」と判断を述べている。