5-3 「純愛」の理念と現実(132〜134)



筆者は森永卓郎による「近代的な恋愛の理念」=「オンリーユー・フォーエバー症候群」を紹介し、「ただ一人の相手を、死ぬまで愛しつづける、という理念であり、言い換えれば「純愛」の理念である」と解説したのち、「実現はある種の困難を伴うものであ」るので、例えばドニ・ド・ルージュモンが「一度選んだ相手は、たとえ情熱が冷めても意思をもって愛しつづけよ」と言わざるを得なかったのだと述べる。


また「純愛」の理念は近代のものかというと、「中世の『御伽草子』や『神道集』のような説話には、すでに原型的な一夫一婦制の理想の謳いあげがあるから」そうともいえない。しかし、現実的には「一夫多妻制は古代から近代初期にかけての東アジアの中・上流階級の家族制度の常態だった」としている。


(つづく)