菊地成孔 / サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍 (白夜書房)



衒学的、そして饒舌。実にインチキくさいこの塩梅が、菊地のテキストに触れる喜びでもある。「格闘技ファンがいかなるものか知らないが、格闘技ファンではないひとが、何かのアナロジーとして読むのが面白いかもしれない」と最初は思った。「ところどころ、ハッとさせられるような鋭い命題があって、それらは良いのだが再読する気持ちになるかどうかは微妙なところだ」と次に思った。ところが中盤あたりから唸らされてしまうのだよなあ。ううううううん、と。いやもうおもしろくて。ちょっと衒学趣味のインフレ感もあるので鼻を衝かれるひともいるのだろうな。


格闘技ファンが菊地さんのペダンチシズムをどう捉えるか興味の尽きないところ。とどのつまり、格闘技ファンそれぞれが、それをどう楽しんでいるのかという疑問がある。でもそれは、さして重要でなくて、この本は、格闘技を通して類比する方法やその楽しみ方を教えてくれているような節があって、わたしはそこがなによりもとてもおもしろかった。


引用したいところは山ほどあるけれど、どうせ己が野暮を開陳するに留まるだけだろうから、止めておいて、おすすめ!『東京大学アルバート・アイラー』も良い本で、同日発売のこの二冊は、菊地成孔の記憶と熱と歴史を介してリンクしているので、併せて読まれるとより一層うま味が増すかと存じます。刺激に飢えている方はお買い求めあ〜れ〜。読了後もブルース〜だ〜け〜ど〜♪