ビム・ヴェンダース監督 / The Soul of A Man



 以前この日記で二度紹介したマーティン・スコセッシプロデュースによるブルーズ・ドキュメンタリー・シリーズのうちの一作品。


 物語は主にスキップ・ジェイムスと、J.B.レノワというふたりのブルーズメンに的を絞って進行する。前者は1931年の3月に、パラマウントレコーズのディレクターに見出だされ、一日でなんと80曲を録音する。翌日の午後も働いて、ギャラは手取りで40ドル。この頃全米にラジオが急速に普及していた為、SPの売り上げは20年代前半から30年代始めの約10年間で十分の一までに落ち込んでおり、彼の名も人々に広く知られることはなかった。当時、ブルーズは「悪魔の音楽」と呼ばれ、反体制的、アンチモラルな音楽だったが、彼は自分の作りたい音楽が為にスピリチュアルズ(霊歌)をも構わず歌った為、ブルーズを好む黒人たちには受け入れられなかった。現在では、ジョン・スペンサーのブルーズバンドや、ベックにもカバーされている彼の「I'm so glad」を世に知らしめたのは1968年、クリームのカバーによってである。


 後者のJ.B.レノワもやはりブルーズとスピリチュアルを分け隔てなく扱い、人間の魂を鼓舞する楽曲を、数多く残した。不運にも1967年、ニューポート・フェスティバル出演の二年後に、彼は自動車事故によりこの世を去るが(69年には、前述のスキップも癌に冒され天に召される)、ルー・リード、ニック・ケイブボニー・レイットロス・ロボスカサンドラ・ウィルスンなど、幅広い音楽家たちが、彼のブルーズを歌い継いでいる。


 映像としては特筆すべきところがないのだが、過去の古いフィルムを使わずに再現映像を多用しているのが、印象的。演奏に関しては、レノワの晩年の映像がとても良く、かすれた高音の歌声を乗せてレイジーな官能溢れるギターが爪弾かれていた。