森田芳光監督 / 刑法第39条



 まず映像のとても暗い色調に驚いた。どういう技術を使っているんだろうか。堤真一の人格交代の芝居が「いかにも」(決してへたくそではない)だったところに、詐病説を持ってきたところは秀逸。まあでも途中から筋が見えてきてしまうんだよな。そのあたりプロットの弱さを感じるので、サスペンス物としては問題あり。鈴木京香の陰鬱な鑑定士ぶりは良かった。


 しかしこの映画はサカキバラ事件にインスパイアされてできたのかしら。専門家や臨床心理の学徒からは批判も多々あるだろうが、これはファンタジーなのだから、「物語」として受け止めるべき。サスペンスという要素はあくまでも撒き餌で、これはある種のプロパガンダ映画なのだよな。プロパガンダまでいかないか。問題提起というか。