美輪明宏 / 愛の話 幸福の話 (集英社)



 いまや妖怪のような面構えの美輪だが、若いころの写真には、背筋をゾクッとさせるような怪しい美しさがあり、なるほどこれでは男性にも愛されるわけだ、と得心した。
 筆者の、人生/生活を通して得た、経験、教訓といったものを独特の言葉遣いで運んでいく随筆集。昭和10年(1935年)生まれの筆者は、いまどき珍しい教養主義の啓蒙家であることがこの本からわかる。ただし、自身の近代欧州趣味への偏りはあまり意識されず、米国文化ばかりを強く非難しているあたりが、美輪ならでは、という感じ。理知を重んじる、と口にしつつも、感覚的な筆致がこのひとの味だろう。瀬戸内寂聴及川光博池辺晋一郎との対談も収録。