嵐山光三郎 / 死ぬための教養(新潮新書)



 こんにちの宗教は人間の人生について無力で、救済ではなくむしろ世界に広く破壊や絶望をもたらしているので、ほとんど頼り甲斐がない。それに代わる杖は死、つまり人間の生についての「教養」しかない、というテーゼに従う「教養書」の紹介本。文体は決して堅苦しくないので、すいすい読めるが、何度か死の恐怖に直面した著者の経験的動機と信念に基づいて書かれているため、そこにはいくぶんかの重みが確かにある。