北澤一利 / 「健康」の日本史 (平凡社新書)

「健康」の日本史 (平凡社新書)


 著者は、「健康」という概念は、幕末に生まれ、それを広めた功績は、福澤諭吉に認められるという言説を披露。「健康」という概念が、社会的な意味づけを常に求められ、やがて大正時代においては、日本の国家主義的傾向が強まるに伴って、きわめて道徳的色彩を帯びることばになる経緯が詳らかにされている。江戸時代に広く知られた「養生」という概念が、食べるに困らない富裕層の占有物であり、「気」をベースにおいた、儒教的価値体系であることも明らかにされている。意外に興奮させられた1冊。