みうらじゅん / 正しい保健体育 (理論社よりみちパン!セ)

正しい保健体育 (よりみちパン!セ)


 あたまのねじがすっかりゆるんでしまった。じんせいにひつようなことは、あたまのねじをおりをみてゆるめることにつきるのかもしれない。などとおもいつついんよう。



 愛の正体は若いうちには絶対にわかりません。歌や本や映画でよく見かけるので、そのへんにあるものだと思いがちですが、愛というのは、実は「ボランティア」のことなのです。(略)
 下の世話をするとか、普通ならできないことを「その人のためならばできる」というのが、本当の愛です。セックスは愛がなくてもできますが、下の世話は愛がなくてはできない。愛は精神病の一種とも言えます。なので、若いうちに一気に愛をつかんでしまわないほうがいいでしょう。徐々につかんでいかないと、まちがえて「この人のためなら死ねる」と死んでしまったりしますから。
 問題は「老後」です。若いときには絶対にできないと思っているお互いの下の世話を、もともと他人である夫婦ができるのだろうか。そのために愛を育み、修行するのです。
 ただ、愛とはボランティアだ、愛とは下の世話だと若いうちに知ってしまうと「じゃあ愛なんていらない」ということになってしまいますから、一般的には言わないようにしているのです。なので現在、「愛」の意味が、「ボランティア」と「セックス」の意味が、ごっちゃになってしまっているのです。


p.86〜87


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