森達也 / いのちの食べかた(理論社よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)


 わたしたちの食べている肉はどこからやってくるか→スーパーや肉屋などのお店から→お店にはどこから運ばれてくるか→精肉市場から→青果市場や魚市場は知っているのに、なぜ精肉市場を知らないか→メディアが取り上げないから→なぜメディアが取り上げないのか→穢れ思想と食肉解体(屠殺)に従事する被差別民の問題があるから→なぜひとは差別をするか→ひとを差別したいという欲望があるから→差別の最たるものが戦争である→差別を無くすには、人間にはそういうものがあると「知る」ことしかない


 というような感じで明快な論旨がどんどん広がっていく感じがなかなかすてき。ちょっと風呂敷を広げすぎている感じがなくもないけど、この壮大な展開をうっかり小学生高学年くらいで読んでしまってびっくりする子供もいるのだろうなあ。
 この『いのちの食べかた』を含む理論社の「よりみちパン!セ」シリーズは実にすばらしい教養書シリーズです。おそらく企画に携わっている編集者たちが若く賢いのだろうなあ。ブックデザインもしゃれていて遊び心があるし、いい感じです。「売る気のあるポップでヤングにストライクなマガジン風味の教養書」シリーズです。そして、良い本が皆そうであるように、おとな(ていうかわたし)が読んでもおもしろい。これはほんとうにやっぱり優れているんだと思うなあ。子供相手だから、という手抜きをした感じがまったく見受けられないのですね。これはやっぱり「良いものを売ろう!」という精神のあらわれだと思う。