吉田修一 / 東京湾景 (新潮社)

東京湾景


 わりと前半で、出会った男女がセックスしたので、精神的なつながりが主題なのだろうと見当がついてしまった。主人公の男はよほどの美男子の設定でないと苦しい展開だ。入れ子式に登場する劇中劇『東京湾景』によって作者の恋愛小説に対する倦怠感が表現されているように思えなくも無いが、劇中劇を展開させる必然性があまり感じられない。緊張感に欠ける作品。