田畑則重 / 日露戦争に投資した男(新潮新書)

日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)


 戦争をするには金が要る。しかし、日露戦争開戦前、欧米において、日本は国としての信用度がまだまだ低かったから、外国(の投資家)へ借金するのはたいへんだった。高橋是清を主として、当時の財務関係者は戦費調達のため東奔西走した。それを助けたユダヤ人投資家ジェイコブ・シフが、日露戦後に日本に招かれた体験記=日記が訳出されており本書の多くを占める。
 シフの日記じたいは観光する外国人の目を通して、明治時代の日本の雰囲気がわかるものの、社交に次ぐ社交の記録が多いため、読み物としては冗長だ。しかし、戦費の面から戦争を語る本を読んだことが今までなかったので、前半の評伝風随筆はなかなか興味深かった。
  1冊の本としての構成には問題があるが、「戦争」を捉える視点を「戦費(カネの問題)」においたところに独創性があるといえそうだ。