細田守監督 / 時をかける少女



 とても良かった。あっという間に時間が経ってしまいました。おしなべてすてきで巧みなファンタスティック青春SFで、しかもきちんと成長物語で、観ていたらあっという間に時間が過ぎてしまい「ああ、もう終っちゃうの」と思ったくらいです。そのくらい物語世界に引き込まれたし「この続きを観たいなー」と思ってしまうくらいだったので、アニメファンの方々はきっとすごい勢いで同人誌を作るのでしょう。
 一番気になっていたのは、タイムリープ(時間跳躍)するのを劇中でどうやって表現するか、どういう小道具で、というところだったんですが、めちゃくちゃスマートな演出に驚嘆。あのCG背景で「んきゃー」と叫びながら主人公の真琴がくるくるりん、ってのはアニメ的お約束なのでしょう。


原作の設定ははっきり憶えていないのですが、主人公のポケーっとした妹と、若くてきれいな博物館学芸員(?)の「伯母さん」がなかなか印象的なキャラクターでした。設定の差異を把握せず、感覚でモノを云うのもなんだけど、かなり現代ふうにアレンジされているし、物語じたいも「別もの」になっている感じがしたけれど、換骨奪胎していて嫌味な感じであるとか、そういう印象が全くなく、すっと物語に入って楽しめたのは良かったです。しっかし、このナイーブな「高校時代」像はファンタスティック過ぎて、オタク、あるいはファンタジーメイニア、学園ものアニメファンにしか受容されないんじゃないかとちょっと思いました。実際どうなんだろうな〜。


 「終わらない夏。でもいつか必ず終わってしまう。モラトリアムの象徴としての夏という舞台装置。そこで繰り広げられる人間関係。SF的な要素。ファンタスティックでどこかとぼけたキャラクターたち。生身で生きている現実の生臭さからは程遠いんだけど、どこか巧みにリアリティを感じさせる演出技法。自分を如何にドライブしていくべきか、という逡巡と思索ととりあえずの結論。オールオーケーじゃないけど、それなりの不器用なハッピーエンディングor破滅」これがわたしの好きな「物語」のパタンだということを、この映画を通して気づかされたのは収穫でした。