美学校音楽美学講座・ペン大有志による合同ゼミ 第12回@京橋映画美学校
2007.1.27 合同ゼミレジュメ
映画美学校音楽美学講座クリティック&ヒストリーコース ウツボカズラ
テーマ:1915-1925年を想像する:チューリッヒ・ダダについて
1. ダダの基本概念について
- ダダとは第一次大戦中、スイス・チューリッヒを起点として始まった反藝術を主唱する思想的潮流。その発生の背景には第一次大戦への反戦・厭戦の気分が強く、人間の理性の象徴である言語表現や既成の西洋文明文化への懐疑を特色とした。
2. チューリッヒ・ダダの始まりと終わり(その後のダダ運動については割愛)
- 1916年、「第一次世界大戦中ドイツから逃れてチューリヒのシュピーガルガッセという湖畔に近い古い街の一角に芸術・文学のキャバレー、「カバレー・ヴォルテール」を開き、いわゆる「ダダ」運動の開祖、その精神的支柱とな」る(フーゴ・バル『時代からの逃走』 1975年、みすず書房)
- 1920年1月からダダ運動はパリにおけるムーブメントとなる(アンドレ・ブルトン、フランシス・ピカビアらが参加)
3. ダダの先駆性について
- 「ダダはなにもいみしない」(ツァラ)という「言説」
- 「言説」…文あるいは言表の連鎖としてまとまった内容をもつ言語表現の意味であるが、ギリシア語の「ロゴス」logosに由来する語であり、直接的、直観的な表現ではなしに、概念作用と論理的判断をへた秩序ある表現というニュアンスを帯びて」いる(フーコー『言葉と物』 事項索引p.40、1974年、新潮社)
- ことばが絶えずはらまざるを得ない矛盾に対する態度/視点=「ダダはなにもいみしない」が大きく象徴するように、このような言語表現を以って、単線的な思考を否定し続けるツァラの振る舞いのなかには、言語表現がもつべき複線的・多層的・重層的な意味内容への純粋な志向性があるといわざるを得ない。
5. 参考文献、参考ウェブサイト
- フーゴ・バル『時代からの逃走』(1975年、みすず書房)
- エリック・ボブズボーム『20世紀の歴史―極端な時代〈上巻〉』『20世紀の歴史―極端な時代〈下巻〉』(1996年、三省堂)
- 塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代 (ちくま学芸文庫)』 ( 2003年、ちくま学芸文庫)
- 塚原史『言葉のアヴァンギャルド―ダダと未来派の20世紀 (講談社現代新書)』(1994年、講談社現代新書)