「たくさんのふしぎ」を喫煙シーンが多いからといって回収(販売中止)するのはおかしい




貴社発行の「たくさんのふしぎ」を長年定期購読して愛読しておりましたが、2010年2月号「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(太田大輔文・絵)は全編にわたってストーリーとは関係なく喫煙シーンが頻繁に描かれ、本文にもタバコ・パイプを礼賛する内容が記されており、子ども向けの絵本としてはあり得ない恥ずべき絵本となっています。
踊る小児科医のblog 2009年12月25日分 より抜粋引用



「子ども向けの絵本としてはあり得ない恥ずべき絵本」という決め付けはおかしい。まあ中身を読まねばなんともいえないが。
むろんこの読者が版元に意見するのはなんら問題ない。しかしながら、版元の対応がまたどうしようもない。




 『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』は、主人公のおじいちゃんがタバコ好きという設定になっており、おじいちゃんがパイプをくわえ喫煙したまま孫たちと同席している場面も複数描かれています。これは、過去と現在をわかりやすい形で関係づける小道具として使用したものであり、喫煙を推奨したり、子どもたちの受動喫煙を肯定したりする編集意図はまったくありませんでした。しかしながら、喫煙による健康被害受動喫煙の害についての認識が足りず、このような表現をとってしまったことは、子どもの本の出版社として配慮に欠けるものでした。深くお詫び申し上げます。
 つきましては、「たくさんのふしぎ」2010年2月号『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』の販売を中止いたします。



福音館書店|おしらせ より抜粋引用



福音館書店の事なかれ主義に失望した。児童図書の出版が主たる業務とはいえ、表現の自由/言論の自由についてどう考えているのか。




販売する価値がないどころか悪影響を及ぼす絵本を定期購読だからといって無理やり買わされる筋合いはありません。
書店を通じて返品しますので代金を返金してください。
定期購読も中止します。
踊る小児科医のblog 2009年12月25日分 より抜粋引用
こうやって版元にいうのは自由だが、それが恫喝的な表現になっているのかどうかすらわからないこの小児科医の暢気さには呆れる。反タバコ主義にもとづくイデオロギー的な発言であり、十分政治的な意図を含んでいることは、文脈の読解能力がある程度あれば、わかることだろうが。



 わたしはここでタバコによる健康被害受動喫煙について論議したいのではない。こうやって一読者の意見に簡単に折れてしまう出版社の意気地の無さを嘆き、哀れんでいるのである。児童書であっても、表現の自由/言論の自由については十分考慮すべきであり、心ある福音館書店の従業員は、商品の回収について憤り、また悲しんでいるはずと思う。
 お詫びをするのは一歩譲ってよいとしよう。しかし回収(販売中止)する必要があったのかどうか。また、商業的な見地(喫煙者の親が絵本を購入すること)についての論議ももっと必要だったはずだ。一社の対応が業界全体に投げかける影響の大きさも考慮すべきであろう。福音館のネームバリューと伝統からいってもっと大きな論題にすべきであった。出版社の責任はむろん、その顧客である読者にたいしてもあるのだが、同業他社にたいしてもあるのだから。