くらもちふさこ「わずか1小節のラララ」(マーガレット・コミックス/集英社)



 ロックバンドのマンガである。昭和51年から53年にかけて発表された「蘭丸団シリーズ」3作が収録されている。この頃、80年代、世の中では、イエローマジックオーケストラが一世を風靡してみたり、百恵ちゃん聖子ちゃんが人気を博したり、ピーナッツベンダーが売れなくなったタイトーが喫茶店スペースインベーダーを送りこんだりしていた。そもそも蘭丸団というバンド名からして極めて牧歌的で魅惑的だ。いったいどんな音楽を演奏しているのだろうか。このマンガのストーリーを要約すると内気なめがねっ子がバンドメンバーの代打で男装し、キーボードパートを上手に弾いてかっこいいバンド仲間に誉められて胸キュンするマンガである。ぼくは今回はじめて、少女マンガというのは他愛もない、取るにたらない題材を、ここまで作品として完成させてしまうということについて驚きを禁じえなかった。阿呆かと仰る方もいるに違いない。しかしぼくは少女マンガが少年マンガとは明かに異なる精神性に貫かれているまったくの未知の分野であることに気づいてしまったのだった。というのはちょっとおおげさですね…。とにかくぼくは今少女マンガには少年マンガ、青年マンガの文法とは明かに違うと、違和感を感じまくっているのが正直なところだ。いったい何が違うのだろう?悩む端からこれも数をこなせばそのうち慣れる感覚だろうか。