倉多江美「傑作集1 五十子さんの日」(フラワーコミックス/小学館)



 まろんさんは「これは読むべきだよ、ウツボくん」と諭すような口調でそっと倉多江美を手渡した。しかも4冊だ。この作品集で、コミカルな…そう、こういうまんがの種類はラブコメちゅうのかな、みたいな感銘を受けたりした。そしてまた絵柄の崩れ具合というか、ああ!まんがだ!という喜び、そういうものも味わったりした。というのも、ぼくがわずかに少女マンガに触れていた時期は主に'90年代であり、吾が妹耳子は強烈な「りぼん」読者。そう池野恋とか吉住渉とか岡田あーみんとかさくらももことか。一条ゆかり先生は描いていただろうか。まあそれはさておき、もう、なんていうか、今のマンガも多くはそうだけれど、というか現代マンガをほとんど読んでいないので分からないのだけれど、わりとかちっとしてしまっていて絵柄がおもしろくないのだ。まんがを読む楽しさというのはやはりその描線を目で追う楽しさがあって、いくらキャラの画が整っていても、むろんそれはそれで魅力的なのだが、やわらかくふにゃふにゃしたへんてこな感じにエロチシズムを感じたりもする。要は画の持っている生命力があるかないかという話なのだが、そのツボというのは人によって感じるところが違うのだろう。まあそれはいいや。これに収録されている「パラノイア」「五月病」という作品は少女マンガうんぬんということを抜きにしても読み得る魅力を持っている。ここらへんがわりと彼女の本質が出た部分ではないかと思う。作者自身がわりと気を病むタイプなのだろう。そしてそういう感覚を作品に構築できるパワーも同時に持っていると見た(笑)。