倉多江美「傑作集2 ぼさつ日記」(フラワーコミックス/小学館)



 たぶんこの作品がとりわけ好きだ。それは作者が壊れていく様が、まんがに良くあらわれているからだと思う。基本的にギャグ。ギャグマンガほど体力の必要な分野もないというし、ギャグマンガ家は3年で潰れるという伝説もあるくらいだ。思えばギャグマンガキチガイっぽい魅力を放つ作品が多い。そしてそのドタバタというか、韜晦ぶりというのは中毒性が高い。漫画太郎は、ぼくは好きではないのだが、先に述べた耳子の「りぼん」購読時代、ぼくが一番楽しみにしていたのは、なんといっても岡田あーみんだ。彼女のマンガは今思えば躁鬱病者の創作物みたいな感じがする。「ルナティック雑技団」というのが猛烈に好きだった。しかし妹はさくらももこのマターリとしたギャグを選んだ。さくらももこは当時の編集担当宮永氏のサジェスチョンがあったかどうだか分からないが、かなり「ゆかい」路線を狙っていたと思う。それはそれで嫌いではなかったのだが、あーみんの狂騒路線は捨て難かった(笑)。そういや以前宮永氏はあーみんも担当していたというように伺った覚えがある。彼女は筆を折って消息不明ということだ。確かにあのマンガには狂気があった。さて大幅に話題がそれたところで「ぼさつ日記」だが、この作品からは作者の身体的なコンプレックスの強さを窺い知ることができる(苦笑)。そして作者の知的な側面も伺い知れる(カフカをネタにしたり・苦笑)。とどめには回を追う毎に手抜きになっていく脱力なギャグの感じがたまらない。明かにやっつけている。傑作集の1と合わせて読むと器用貧乏という印象を受けるが、小生の目はいささか穿ちすぎているだろうか。


と、ここまで書いてきて倉多の「ジョジョの詩」(フラワーコミックス/小学館)をまだ読んでいないことに気がついた。傑作集の3と合わせてこれについては明日述べることにしよう。


ちなみにいっとう最近読んだマンガは山本直樹「安住の地」2巻(IKKI/小学館)なのだが、正しい不条理エロマンガというか、寝起きに忘れられない悪夢のような微妙な終わり方だったことをここに記したい。おそらくどうまとめるべえか、と思案の末あんな風になってしまったのだと思いたい。見る人によっては「やっつけ、ここに極まれり」と言う人もいるだろう。「安住の地」は、端っこのほうで世界観が「ビリーバーズ」と連なっていたこともあったので、当初からこの結末は計算に入っていたのかもしれないが。