菊地成孔発言要旨(太田出版刊『クイックジャパン』49号より)



「物語」を理解して、受け入れるためには、「構造」が大事だという話。
「物語」を受け入れる(信じる)のも、拒否する(信じない)のもまず「構造」が理解できないと
難しい(おもしろくない)ってことでしょう。
「妄想」から「物語」へと導くカギが「構造」でありうる、という理論に、菊地さんは確信があるのかな。
なにはともあれ「構造」の理解が治癒と快楽につながる‘音楽’って…とてもおもしろそうです!


ぴんときた部分を抜書きしてみます。インタビュー全体の流れがおもしろいので、ぜひ買いましょう(笑)。

  • デートコース米英同盟からDCPRG



「要するにDCPRGが好きな人ならみんな好きなフェラ・クティとかスライ&
ザ・ファミリー・ストーンとか、ああいういわゆるファンク/アフロ・ジャズに
もっと近づく感じですね」(p.101)


「今度のアルバムはバンド名こそ同じなんだけど、それ(註:‘戦争’まみれの
コンセプト)はもう形骸化してるというか。」(p.103)

  • 日本における政治と音楽



DCPRGなんて名乗って戦争がどうしたとか言っていたバンドが、結局は゛フロアの
享楽主義"によって形骸化されて、若くてイライラしている子たちがそんなこと関係なく
踊っているだけでしたってことで、いかにこの国で<政治>と音楽が結びつかないかという
逆証明の方に加担したい気分ですらありますね。」(p.109)


「本当のことを言えば、戦時であれ平和時であれ、常に政治的/哲学的/科学的/宗教的な
発想で世の中を捉えていこうとみんなが思っている状況が゛知的な社会"なわけで。(略)
日本にはノンポリの享楽主義しかずっとなくて、そこに突如として゛北朝鮮の驚異"とか
いう形でエグく政治が飛び出してきたからビックリしてそれに対応してるだけだよね。
本当は戦時じゃなくても常に考えられているべきで、ある意味マトモになっているんだと
思いますね」(P.109)

  • 音楽と鬱



「でも、若い子で鬱病持ちの子って本当に多いよね。完全な自己愛にヤラれている人たち。
絶対環境ホルモンのせいだと思うけど。若い子、ちょっとつまづくと一気に死にたくなる
って言うもんね。「それは厳しいねー大変だねーそれ」って(笑)。あと、将来のことを
ちょっとでも真剣に考えると怖くなって何も出来なくなるから考えないって。」(p.113)


「僕の立場はやっぱり精神分析的だから(音楽を通して)「みんなで神経症的な部分を
治癒していこうよ」って思ってるわけ。だから療法(トリートメント)ですよね。昔は
町に神社とか拝み屋があったじゃん。(略)」(p.113)

  • 快楽と治癒につながる音楽



「アフリカのダンス治療みたいに集団ヒステリー状態に没入していって、呪術師も
患者もダンサーで、みんなで踊りながら狐憑きを治していくみたいな、ああいう感じ。
音楽のジャンルで言うと、アフロ+現代音楽って感じだね」
「すごく簡単に言うと、曲がちょっと難しくなるわけ。」(P.104)


「要するに゛快楽のための難しさ"ってことでね。頭と心を使って曲の゛構造"を
理解することが快楽と治癒につながる音楽。っていう風になればいいなと思ってる。」(p.115)