榊原夏『マッカーサー元帥と昭和天皇』読了



主に従軍写真家ディミトリー・ボリアが遺した貴重な写真をもとに敗戦直後の天皇マッカーサーの関係を描く。
昭和帝に関しては、貴重な写真からその朴訥な人柄は偲ばれるものの、さして衝撃的な逸話が語られるわけでもない。
それに対してマッカーサーは、実に話題に溢れた人物として描かれる。立派な母からの強い抑圧、
エリート軍人としての成功、そして度重なる女性関係における挫折。積極的な好奇の目を買うのはやはり彼だ。
ただ、厚木に降り立ったあの尊大なマッカーサー観を覆すような話もいくつかある。
天皇と対話を重ね、支配者としての側面も政治的な意図もじゅうぶんにあったようだが、
次第にその人柄に惹かれていったようだ。


やっと幸せな結婚を得て自信に満ち溢れた姿であらわれたマッカーサーに、早くに
大正天皇を喪った昭和天皇が、理想の父親像を見たのではないか、という筆者の提案は興味深い。
戦後日本の繁栄はマッカーサーが去った後も、アメリカなくしてはありえなかった。
そういった点で、このふたりの関係は、実に戦後の日米関係を象徴しているように思える。