堤幸彦監督『恋愛寫眞』(渋谷東急)



学生1000円だというので、学校帰りに観た。『インビテーション』誌での映画がらみの
広末のグラビアが良かったのもある。どこか力が抜けて、痛みを湛えた顔が出ていて良かったのだ。
写真家との間の信頼感かな、と思った。


テーマ。人生色々辛いことあるけど、ハングリーにいかなきゃ!手段を選ばずにチャンスはものにしなくちゃダメだよ。
青少年向けの啓発映画、という感じなので、ぼくはこの映画を中年以降のひとがどう感じるのかも興味がある。


この映画は主役のキャスティングが成功している。松田龍平と広末の表情がとにかく良い。
ぼくは常々、松田龍平を映画雑誌で見かけては「ヘンなツラだな」と思っていたが、
彼は銀幕で妙に映える顔だ。これからが楽しみだ。広末はエキセントリックだけど
ちょっと脆くて純なところもある、エナジェティックなキャラを好演していた。
彼女もこれからが楽しみである。とにかく、この二人の表情につきる映画といっていいだろう。


映画の筋書きは少々乱暴に感じる。自分探しに東京からNYに行くというのも
いささか陳腐だし(分かりやすいが)、軽く9.11に触れて流すところもひっかかる。
たぶん制作途中でテロが起きて、じゃあロケ地変更という訳にも行かなかったんだろう。
テロ以降ぼくがNYやアメリカを観る目は、どんなかたちにせよ変わっているし
そこでひっかからないわけにも行かない。NYで通過儀礼的に松田が肉体的暴力という
わかりやすい困難(人生の苦難を実に分かりやすくメタファーしている)に何度も
会うのだがそれもいささか戯画的な演出が鼻についた。ウソっぽいNYを描くことには
成功しているとも思う。画に描いたように日本人から観た殺菌されたNYだが、堤は
べつに舞台がNYじゃなくてもよかったのかもしれない。確信犯かもな。


劇中に出てくるニコンのカメラやフジロックフェスTシャツ、日清カップヌードルなど
いかにも「スポンサーでござい」という画が出てくるところにも辟易した。とにかく
疾走感と躁的なグルーヴ、そして妙にコメディタッチな演出ばかりが目についた。
クズ映画だと思うが、とにかく松田と、広末の若さは輝いている。若さを補給したい人は観るとイイかも。


蛇足。小池栄子のディープなファンは観に行ったほうがいいと思う(笑)。彼女の演技の男っぷりはすごい。
まあ、ちょっとウソっぽいけどね。