2-7 「性的弱者論」と「恋愛弱者論」



筆者は「セックスの相手がいないということが、一人の男、あるいは女の精神衛生に与えるイメージがどの程度のものか、これはあまり研究されていないように思える」(64)と述べた後、「セックスの相手がいない、というのは「心身問題」であって「身体問題」ではない」(65)と言う。つまり先に定義された「恋愛欲」に動機付けられた「少しはそれらしいコミュニケーション能力がなければ楽しいセックスはできないのであって、ソープ嬢と楽しくセックスできる能力があれば恋人を作ることできるのであり、問題なのはそれができない男なのである」(同)としている。


この「恋愛欲」に動機付けられた「少しはそれらしいコミュニケーション能力がな」い男にかんして、筆者は宮台真司が用いている「性的弱者」(「恋人を作るための能力を持たず、セックスの相手のいない男」)に触れた後、それについては「私も唱えていることになっている」(66)らしいが、「じつは私が言っているのは「性的弱者論」ではなくて「恋愛弱者論」なのである」(67)とし、「生身の他者にセックスのような形で自分を受容してもらいたいという欲望」(同)つまり「恋愛欲」に動機づけられているが「他者を「恋愛」のような形で獲得する能力を持たないものをどうやって救済すればいいのか」(68)と問いつつ、この章は終わる。