4-2 「もてない男」論への反響への返答(106〜108、110〜111)
筆者は『男であることの困難』で「「もてない男」を弱者として提示した」のは「フェミニズムに対する一種の攪乱戦法だった」とし、その動機として前述した「法界悋気」があったことを述べる。そして、「もてない男」論への反響として以下の4つをあげている。
- 1 「「涙なしには読めませんでした」と言ってきた後輩(男)もいたが、彼は私が上野千鶴子を「いい男好き」と評したのに対して、「でも小谷野さんもいい女好きじゃないですか?」と訊いてきた」
- 2「三十五歳で童貞だと言ってきた読者もあり、切々と苦しみを訴えて、「こんど風俗に行こうと思っています」と言っていた。」
- 3 女性からの好意的なメールが多かったが、「「もてない女のことも問題にしてほしい」という批判が、『朝日新聞』で取り上げてくださった斎藤美奈子さんを始めとしていくつかあった」
- 4 「金井景子さんの書評では、上野千鶴子に対しては批判的なフェミニストも少なくなく、まるで上野がフェミニストの代表のようにいうのはやめてほしいと批判された」
上記の四点に対する筆者の返答は以下のとおり。
- 1 「もちろん私だっていいい女は好きだ」が、「上野の場合、「いい男好き」を妙なレトリックで「正義」であるかのように
ごまかすから攻撃しただけだ」
- 2 「私は売買春否定論者である」が、「「もう風俗に行くしかセックスを体験する道はない」と思いつめた男性に対して「やめろ」
とは言えない。」
- 3 「私は、とりあえず、女のことは女が書いてくれ、あたかも女のことがわかるように振る舞うのは偽善だと思う、と答え」たが、
井上章一『美人論』に対する小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』内での「現実、こーじゃん」と言っているだけで、どうすればブスを救えるか考えていない」という評を見て、「考え込んでしま」った。ただし、「「もてない女」たちが、なぜ男は美人を好むのか、それはテレビや映画の影響ではないのか、というようなことを唱えはじめたら、私はきちんと対応する」。