ウツボが訳す日本国憲法前文 (第3回)



小生が訳す日本国憲法前文の第三回である。つたない日本語訳をご紹介する前にタキネコさんから有意なご指摘をいただいたので、紹介したい。



実は、国際法規や条約などの重要な法規を、その国の母国語ではない言葉でかかれたものを原典とするのは、別段珍しいことではない。国連で公用語となっている言葉を用いることが多いと思われるが、最も使用されるのはフランス語である。なぜか。それは、フランス語ほど文の構造を誤読不可能なほど正確に記述出来る言語はないからだ、とされる。実際、フランス語の堅めの論文は、異様な長文であるにもかかわらず、内容はきわめて明晰な物が多い。どの言葉がどの言葉にかかるかが、動詞や名詞の性数変化で一目瞭然だからだ。そのような事情を勘案すれば、日本の法律であっても「原典が英語である」ものがあっても不思議ではない。しかしながら、日本国憲法の「原典」は英語ではない。日本語である。


En reves 2005-02-12エントリー 「憲法を翻訳すること」より


氏の理解によれば上記のとおり「日本国憲法の「原典」は英語ではない。日本語であ」り、それは「GHQの草案を元に作られたものである。それ故、GHQ意向が強く反映されているとされる」ということだ。ご笑覧頂いている皆様にも今一度心にとどめておいて頂きたい。


さて前回は、憲法が政府について定めている部分についてだった。今回は、日本人の平和に対する考え方が述べられており、平和の維持と圧制の排除に努めた結果、国際的な評価を得たいという希望についても触れられている。


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We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in the peace, free from fear and want.


わたしたち日本人はいつでも平和を心から願い、どうやったら人と人、国と国との関係をうまく調整できるか、ということについてよく考えている。また、世界の平和を愛するひとびとがもつ正義と信念を信頼することによって、自分たちの安全と生存を維持しようと努めている。さらに、平和を維持することと、専制奴隷制、圧制や偏狭な政治を世界からなくすよう努め続けることによって、国際社会で名誉ある地位を占めたいと強く望んでいる。加えて、全世界の人々が平和に暮らし、恐怖から自由であり、また、そうありたいと望む権利を持つことはごく自然なことであると考えている。


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第4回(最終回)に続く。