対談2:多和田葉子(作家)×伊藤比呂美(詩人)



多和田の主張:「日本語はすばらしい」という言説が最近人気のようだが、日本語について自信をなくしたほうがずっとよい。なぜなら、自分が話すことばに自信をもてないとき、ひとはことばに対して真剣に向き合うからだ。わたしは、日本語が聞こえない異国で、片言の外国語で意思疎通を図るのが好きである。赤ん坊のような気持ちでことばと戯れることが出来るからだ。


伊藤の主張:最近の日本人が書いたものが読めない。近代的自我とでもいうものが鬱陶しいのである。だからどんどん、口承文藝のようなアノニマスな表現へ惹かれている。ひらがなや豊かな擬態語・擬音語を持つ日本語を愛している。米国に暮らしているが、周りの人と話したいとはちっとも思わない。日本に帰るたびに、「わたしは思ったことをなんでも表現できるんだ!」という多幸感に包まれる。


感想:多和田の音読した詩がすばらしかった。クールな多和田とホットな伊藤の組み合わせがよい。人選の勝利。