鴨下信一 / 面白すぎる日記たち (文春新書)



東京放送勤務で、山田太一脚本『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』を演出したという氏の筆は、面白い。本書で紹介されている滅法それなものを取り上げると正岡子規『仰臥漫録』の壮絶さ、性欲に支配されて右往左往の悲しい、蘆花&啄木。そして、白眉は重光葵木戸幸一両名の大戦末期〜巣鴨入獄期における日記を通した人物分析(第6章)である。今尚評判の高いドラマシリーズの演出家であった氏の、衰えぬ洞察の鋭さを垣間見た気分になれる。ウェブ日記だとか、日記文学が良くも悪くも好きで、好きな御仁には、おすすめの一冊です。