片岡義男 / 音楽風景 〜ロックというアメリカの出来事〜(シンコーミュージック)



 片岡は軽薄な恋愛小説ばかり書いている作家という印象があったのだが『音楽を聴く 片岡義男』シリーズをはじめ、音楽についての随筆は本当に素晴らしい。本書では「わたしたちの知るブルースは、果たしてニグロ・フォークでなく、南部を離れた黒人たちによって歌われ、レコード産業を通じて広くアメリカ市民に膾炙した都市音楽である」というテーゼのもと、ロック音楽を用いて文明批評を行っている。  ロックに限らず、米国の大衆文化に興味のある方には面白い一冊になること請け合いである。時代を感じさせる記述もあるが、音楽を通じて米国への洞察が光る。