江戸川乱歩 / 化人幻戯(江戸川乱歩全集/光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯 (光文社文庫)


 語り始めると長くなるので、抽象化して言うと、キッチュや耽美や変態性欲をコーティングする乱歩独特の品の良さは何物にも代えがたい、ということ。この年になって、少年物を読むと、その世界観の牧歌性も捨てがたい。わたしは乱歩を恐らく、推理作家としてではなく、ファンタジー作家として読んでいるのだろう。巻末の註釈や解題には乱歩マニヤたちの熱意も存分に詰まっており、文庫とは思えない読み応えがある。