橋本治の男になるのだ―人は男に生まれるのではない (ごま書房)

橋本治の男になるのだ―人は男に生まれるのではない (ゴマブックス)


 著者は言う。「自立というものを誤解しているひとが多すぎる」と。「自立とは、男が女に、女が男に頼らなくて済むようになること」だ、と。「できないこと、わからない、知らないと素直に認め、自分のすべきことはなんでもすると覚悟して、なんでもする」のが、「一人前」であり、「人並み」や「世間並み」が「一人前」ではない。ましてや、「自立」と「一人前」には何の関係も無いと。
 世間で、文字通り「一人前」であることが求められるということは、実は少ないのではないか、とこれを読みながら思ったし、「自立」なんて、かなり厳しい。現実と云うのはもっと汗や涙やそのほかの液体でどろどろしているではないか。
 今までの世間は「自立」なんてものは大して必要としていなかった、というテーゼに貫かれている一冊。そして、「自立」なんてものがなければなくて済む、ということも橋本はきちんと云っている。勇気あるし、賢いな。知性という感じがぷんぷん漂ってきて、近寄りがたいが;)
 「会社も学校も「できているはずの人間の能力を検査して、利用するだけの場所」であり、「自立」を強調するのは「人生は青春だけでできあがっている」と言うようなもの」と云う作者は「大人」だな、と思う。しかし、読みやすくて強烈な一冊でした。橋本は上から物を見るような独断的な言い方さえ直せば、もっと売れるんだろうと思うけど、でもこういうオカマの毒舌のようなトーンが人気の秘訣でもあるんだろうな、と思う。