NHKスペシャル:サイボーグ技術が人類を変える (総合テレビ)



 案内人は立花隆http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/project/nhksp/)。池谷裕二の『進化しすぎた脳』(http://d.hatena.ne.jp/utubo/20051027#p1)に出てきたネズミの実験の話を映像で見ることが出来て、それもおもしろかったが、刺激的だったのは、やはり人工眼球、人工内耳、脳からの電気信号をコンピュータ制御する義肢の話など。


 見ている間に、人間の体が、すべて代替可能なマシンみたいに思えてきた。人間の脳すら、電気刺激で変えていくことができるらしい。アメリカではパーキンソン病うつ病の治療のために、脳内にワイヤを通して、ICチップを挿入する手術があるそうで、実際に手術前/手術後の患者が出演して、インタビューを受けていた。パーキンソンもうつも、脳の器質異常に起因するので、「病因」を内服薬ではなくて、フィジカルに、ダイレクトに「処置」してしまう訳だ。頭蓋骨に穴を開けたり、脳内にチップを埋め込む訳で、決して安全な手術とはいえないが、全米パーキンソン病患者のうち、2万人がすでにこの手術を受けたという。彼らは、ICチップに送る電気信号のスイッチを手放せない。スイッチを切ってしまうと、症状が再び現れて、筋肉が痙攣するのだ。


 脳インターフェイス(何かをしたい、と思うだけで、自分の意思が電気信号に変換され、ネットワークを経由して、PCディスプレイ上のカーソルを動かせたり、テレビのチャンネルを変えたりできる)や人工海馬(記憶障害者の記憶の補完/保管に役立つ)の技術が最後に公開されたが、米国防総省はこういった技術を、前線の兵士等に採用し、強化人間(enhanced human beingとでもいうのか)を創る計画があるという。脳科学神経科学、サイボーグ工学というものが軍事利用されることを考えると、国家の所有する軍隊に限らず、テロリストたちがその技術を手に入れることもまた考えられるわけで、実にこの世はふしぎで恐ろしい世界になりそうだ。核ミサイルの発射ボタンを、ネットワーク経由で遠隔操作したり、とか、素人でも考え付きそうな危険が沢山ある(素人っぽいな〜)。テクノロジーには常に功罪があるが、サイボーグ技術もその例外ではないようである。