吉本隆明 聞き手:糸井重里 / 悪人正機 (新潮文庫)
結論から言ったら、人間というのは、やっぱり二四時間遊んで暮らせてね、それで好きなことやって好きなとこ行って、というのが理想なんだと、僕は思うんだけど。
ええと、ほら、僕らの世代の人たちで、ちょっと左翼っ気のある人なんかだと、「労働は大切だ」って言うでしょう?そうすると、その極まるところがどうなるかっていうと、清く貧しくっていう思想になっていくわけです。
清貧の思想、遊び心は持たない、ぜいたくもしない―どうしてもそうなるんですよ。
何でこいつら、こういうこと言うんだろうって思いますね。普通の人がぜいたくして、いい洋服着たりうまいもの食ったりっていう、そのテーマがなくなっちゃったら、歴史の半分がおもしろくねえってことになっちゃうんですよ。
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