鋤田正義 写真展@銀座クリエイションギャラリーG8&ガーディアン・ガーデン

 ちょっと変わってたかもしれないと思うのは、映画館で写真を撮ってたこと。映画館のスクリーンを撮るんです。マーロン・ブランドなんかよく撮りましたよ。直方の映画館は、いわゆる二番館。こっちは、映画雑誌でいち早く情報はつかんでるから、二番館に回ってくるのが待ちきれないんです。それで、わざわざ博多まで自転車で行くんです。山を越えて行くんですけど、往復一〇〇キロはあるんですよ。朝、五時頃に起きて自転車で博多に行って、二、三本映画を観て夜中に帰ってくる。
 電車で行けばいいんですけど、その電車賃も映画代にしたいんです。お小遣いもたくさんもらえるわけじゃないですし。昔は道も舗装されてないから、転んで足をすり剥いたりしてね。当時、普通の自転車は二六インチだったんですけど、うちの自転車はちょっと大きくて二八インチなんです。それで結構転んでた。でも若かったし、まったくへっちゃらでした。今じゃ、とても信じられないですよね(笑)


小山芳樹、ガーディアンガーデン/タイムトンネルシリーズvol.22 鋤田正義写真展『シャッターの向こう側』(リクルート)p.9



 会場は銀座にあるリクルートのギャラリー。まず、クリエイションギャラリーという、新橋寄りの会場には、マーク・ボランデヴィッド・ボウイYMODEVOジミ・ヘンドリクスなど有名なミュージシャンのポートレイトが所狭しと並んでいた。
 80年代の広告写真が発する異様なエネルギーに打たれる。写真に踊るコピーもなんだか、独特のトーンがある。お金だろうか。熱気だろうか。浮き足立っている感じか。しかし、ネガティブとも言い切れない、パワーを感じた。

 銀座7丁目にある、ガーディアン・ガーデンには、鋤田氏のアマチュア時代の写真や、個人的に撮りためている風景写真が多かった。モノクロ作品が醸すクリアカットな印象。見る者のイマジネーションをドライブするシンプルかつ端整な作品が多かったが、ファッションブランド「JAZZ」 のポスター群は、シュルレアリスティックな塩梅で、また別の存在感があった。
 会場に入ってしばらくしたら、バックスペースから小柄なおじいさんが出てきて、スタッフに挨拶して帰って行ったのだが、その人が鋤田氏だったのには驚いた。どこにでもいそうな感じではあるけれども、とにかく元気そうな雰囲気が心に残って、会場で写真展に合わせて発行している冊子があったので思わず買ってしまった。500円也。上で引用しているのはその中でも特に印象的なパラグラフです。