南博×菊地成孔デュオ@新宿ピットイン



富士そばで肉そばを啜ってから二丁目へ。演奏開始してから30分くらいしたところで物凄く細い女子が前からふらふらやってきたので「こいつぁやばい」と思って支える。軽い痙攣、軽い意識の混濁、貧血か。「大丈夫?」と声をかけると弱々しく顔を左右に振る。その間に気のきいた男性客が素早くスタッフを呼びにいき、近くにいたナイスガールふたりに搬出を任せたが、しばらく音楽も耳に入ってこず、前半戦終了。「チェルシー・ブリッジ」と「ユー・ドン・ノー・ファット・ラブ・イーズ」の間に即興演奏が挟まるような構成だった。20分くらいの休憩のあとセカンドセットはビートルズのカバー「ハニー・パイ」から。いかにもポール作曲っぽい感じのブギーなナンバーだが、南さんの洗練された演奏は、含羞に満ちた後ノリで(レイドバックしてる、というほどセンチでもルースでもない、絶妙なスノビズム!)楽しいけれど、微妙な感じではあった。


菊地さんはソプラノサックスを多用。わたしはあの高慢ちきな世間知らずでヒステリカルな小娘のような音色があまり好きではないのだが、南さんのダンディピアノにはそのくらいの茶目っ気が向かいあったほうが観客、主に女子には受けるだろうな、などとだんだんと足がしびれてきたので、即興演奏中はくだらないことをつらつら考えていたが、「ブルー・モンク」のピアノソロが素晴らしく、たまげた。今年聞いた南さんの演奏の中でいちばん素晴らしかった。あの不協和音の用い方に見受けられる独特のセンスには元ネタがあるのだろうか。アンコールにバッハをやっていたが、これは和声の処理がやや微妙な感じ。しかし「ブルー・モンク」は文句なしに良かったぜ、と脳内でダジャレながら帰る。