永井均 / これがニーチェだ  (講談社現代新書)



なかなか晦渋な文体で、読みにくい。哲学の人なんだなあ、という感じ。永井の解説するニーチェからは、彼は延々と「真理」について述べている感を受け、またわたしがまったく「真理」に興味が無いことを再確認する良い機会になった。偉大と称される思想家や哲学者、作家、詩人の繊細は、時に余りに繊細すぎて「誠実」であることが、精神衛生にきわめて良くない、ということが本書からも良く分かる。


ヴィトゲンシュタインの「語り得ぬものには沈黙せねばならない」というテーゼを引いて、後半ではニーチェ批判を試みているが、それが孕む「形而上学そのものの否定」という問題をニーチェの思想に敷衍した趣があり、それはまたニーチェを取り扱う哲学研究家としての筆者じたいを否定してしまう感もあり、陳腐にいえば「問題作」である。