スパンクハッピーと鰐の関係

 2002年に発売された新生(もう付けなくてイイかな?)スパンクハッピーのセカンドシングル「Angelic」は、憑かれたように聴き返したCDとして記憶に新しい。このシングルに収録された「拝啓ミス・インターナショナル」という楽曲に関してはことあるごとに言及し、その曲のすばらしさを称えてきたのだが、今回はその表題曲「Angelic」に関しての話を少しだけしたいと思う。


 そもそもは、先日頂いたコンピスパンクス好きが聴きたくなる楽曲というテーマで主に80sの楽曲がコンパイルされた良コンピレーション)にフェアチャイルドの楽曲が入っていたことがきっかけになり、そのボーカルを担当したYOUへの男女を問わぬ愛情告白で小生の掲示板が賑わった。以前から、「スパンクスはShi-shonenである」等々、そのネタ元に関しては意見があったのだが、そのYOU(近頃はテレビのバラエティ番組で忌憚無くズバズバ言ってるあのおばさんですよ・おばさんなんていうと熱いファンに殺されるんだけど・きっと今やYOUがバンドで歌を歌っていたことの知らない若者も増えていることでしょう・笑)が、昔鰐を買っていた、というエピソードをかたるさんが披露されたのである。
そこで小生はたと思い出した。ありゃこれ、どっかになんかなかったか?と。


 スパンク・ハッピーの80sぶりはそのアレンジがテクノポップであることも(菊地成孔はメロディーの骨子はジャズだと言っている)さることながら、やはり歌詞においてもいろいろなイメージがコラージュされているのだろうと常々思っていた。具体的には分からなくても、なんとなく雰囲気で。件の「Angelic」には、ずばり「昨日のパーティーでは鰐に金魚をあげていたの」という1節が出てくるのだが、ぼくは「ワールドハローソング」(公式音源は出ていない・ライブで聴ける・笑)などの歌詞の雰囲気と共に、岡崎京子の「pink」あたりにそのイメージの源泉を辿れるのではないか、とぼんやりと思っていた(実際「pink」に出てくる倦怠少女は鰐を飼っているのだ)。ところが恐るべきはミスターサブカルへだらんことかたるさんだ。実は岡崎京子とYOUの交友から、「pink」の主人公のキャラクターが生まれたことをご存知だったのだ。つまり岡崎がYOUのキャラを直接サンプリングして(まわりくどいんだけど、YOUがかつて本当に鰐を飼っていたわけですね・笑・最近はタランチュラを飼っているアイドルもいるみたいだけど・苦笑)いて、それを菊地成孔がさらにサンプリングしたのだと。


 さらに指摘は続いた、鰐を飼う美少女の原型は、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」に遡れると…。確かに、この作品の中ではアネモネという女が鰐を飼っているのだ。かたるさんによるまとめを引いてみよう。


 「時系列的に見れば、『コインロッカー・ベイビーズ』のアネモネ、YOU、『pink』のユミちゃん、『エンジェリック』という順番。でも岡崎京子のネタがYOUからってのは確信があって、何故なら岡崎先生は後期Shi-Shonenと初期フェアチャイルドのライブは皆勤だったから。


 ちなみにエサでいうと、アネモネのワニの餌は忘れたけど、YOUの飼ってたワニ(体長30cmくらい・ライブで披露してた・笑)は、渋谷ハンズで餌用の金魚が買えて、それをやってるという話だった。ユミちゃんのワニは一日10キロの鶏肉、あとはマクビティのクッキーにピーナツバターとバナナをのっけたもの」
(引用元は上記掲示板・2185番より)


 さらに補足的に年代を記せば以下のようになる。



 龍の著書をYOUが読んで刺激されたのかどうかは、分からないが、もしかするとまったく関係がないのかもしれない。80年代といえば1980年生まれの小生には噂に聞きしまぼろしのバブル景気の時代。当時、バブリーな空気の都会ではおかしなペットを飼うのが流行ったりしたのだろうか?そのような風俗には、とんと疎いのだが、エリマキトカゲが流行ったなんて話は聞いたことがあるような気がする。また、龍は今も昔もその時々の風俗を道具にして物語を描くことが多く、このときも、当時コインロッカーへの捨て子が続発し、それを利用した作品ではなかっただろうか。そのセンで類推すると当時、変わった爬虫類などをペットにするのが流行っていたのかもしれない。


 さて、YOUと、岡崎の関係性はかなり濃厚に思われる。年代的にもかなり近いし、かたるさんの証言を信じれば、おそらくYOU→岡崎→菊地という線で、「鰐に金魚をあげる女の子」というキャラがサンプリングされたことは想像に難くない。だからなんなの?と言われたら、返事に詰まりそうなのだが、折角掲示板で盛りあがった話でもあるので、このようにしてまとめてみた次第。情報をお寄せ下さった、かたるさんはじめ皆さんに感謝します。