映画美学校/音楽美学講座/クリティック&ヒストリーコース/第3回講義@京橋・映画美学校
- 講義内で紹介されたおもな書籍
- R.マリー・シェーファー (著)鳥越 けい子 (翻訳) / 世界の調律 サウンドスケープとはなにか (平凡社ライブラリー) (平凡社ライブラリー)
- 関 孝弘、ラーゴ・マリアンジェラ / これで納得!よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ (全音楽譜出版社)
- 第2回では日本の文脈を押さえた講義が行われた。今回は、世界の文脈。
- 伝達:com・mmuication
- com・・・一緒に/共に
- dis com munication
- dis・・・距離がある
- 通じないこともひとつのコミュニケーションである
- 距離
- 空間的/地理的な距離 ex. 大阪の友達/子/孫/次世代
- 歴史的/時間的な距離
- 記録されたもの(劣化しない)
- 『海の上のピアニスト』のエピソード
- 一度だけSPに記録する→SPを割ってしまう→SPはつなぎ合わせることができる(ブチブチノイズ)
- 声や音はレコードしなければ残らない=「レコーディング以前」
- 音楽を奏でる楽器や楽譜もメディアである
- 形・作法・身体
- 音楽・・・音が発され、その展開(持続)を伝える
- 音楽・・・ある一定の時間は経過する(時間がかかる)→音楽はだんだん死ぬ(死んでいく)
- 音楽作品は人間の一生(生まれて死ぬまで)のメタファーとして捉え得る(始まって、やがて終わりを迎える)
- 楽器/声 「音楽は抽象的である」というテーゼを疑う必要がある。なぜならベーシックな部分が「具体的」に発された音で成り立っている表現だから。必ず楽器/声/PCといったメディアを通して音楽は生まれる
ex.人のサイボーグ化(臓器移植など)
- 1時間ある演奏時間の音楽を数秒で「聞けて」しまったら、本当に音楽を聴いていると言えるのか?
- 人間は可聴域を広げるべき?→こうもりになる
- 現在のメディアを含めて音楽を考えるとややこしくなる
- 自分が好きなものはあるのか?
- 全てがデータベース化されているのではないか?
- 楽器・・・musical instrument(音楽の道具)
- 楽器の材料はどんなものでもOK。材料は、そこにあるものを使う。従って、環境/風土と不可分の関係にある
ex.アジア→竹(bamboo)の楽器
アラブ→木切れ(寄り木細工のように作る・・・砂漠では木が大切)
アフリカ→岩を地面に埋め込む
ex.竹やぶを通る風の奏でる音→自然音
- 人というメディア
- 人の手によって洗練されていく楽器
- 手元にあるような/プリコラージュして作られる
- 楽器や声の響き方は環境や風土に影響される
- 芝居
- 京劇(シナ)/パンソリ(朝鮮)/能、歌舞伎
- 移動
- 時間/空間的移動
- 単独/集団
- 楽器/楽譜
- レコード、ラジオなどメディアの発達に伴い、音楽の遍在が可能になった
- 音を発し、音楽として聴取される
- 「点」(個)の移動→「点」が断続的に空間を生み出していく
- レコードと一回性
- いま・ここ(hjc et munc・ヒク エト ムンク)⇔録音された音楽
- 楽譜というメディアの面白さ
- 何を伝えるのか
- 音をいかに伝えられるのか
- 音とは何か→「音」の定義
- 高さ(pitch)
- 強さ
- アタック
- 音色/倍音
- 持続(時間)
- 楽譜は抽象である・・・実際の音はみな違って、多様
- 音の動き・・・音色に関して楽器は指定できるが、ニュアンスは削ぎ落とされる。西欧文明/文化の、音色やニュアンスよりも高さと持続を重く見る思想が楽譜には現れている
♪単声聖歌(グレゴリアン・チャント)・・・西欧中世
- ネウマ譜→音の上下を表す楽譜
- タブラチュア譜→タブ譜(楽器のどこを指で押さえるかを示す楽譜)
tablatua→tableと語源を同じくする(置くという意味がある)
- コードネーム→19〜20世紀和声理論の発展と成熟によって生まれた
- 楽譜(五線譜)は西欧というコンテクストを参照させる装置。ニュアンスはその場で口で伝える。
- その時々の場所で共有しているもの→文化
- 楽譜は何を伝える/伝えたいのか
♪ゴルドベルク協奏曲(チェンバロの為に書かれたが、ピアノ、ピアノ2台の為に編曲されたものと併せて聞き比べる)
♪スティング歌唱/流れよ、わが涙(ジョン・ダウラー作曲)・・・ルネサンス時代の英国の雰囲気をフォーク/ロックのコンテクストにうまく汲み上げている。スティングの歌唱から分かることは、譜面をただそのまま解釈すればよいということではなく、「解釈」は身体のレベルまでの落としこみを必要とする、ということ。
- 楽譜を読む自由さ→ある文化圏において、あるイメージを様式や技術と共に転写(固着)させた楽譜を、他者が解釈することによって、必ずズレが生じる
- 作曲→楽譜←読み/解釈→演奏←聴取
- 読み、解釈には技術/再現性の問題が必ず在る
- リスナー(聴取者)の文脈
- ディスコミュニケーション・・・断絶
- どこまで文節化して批評可能なのか
- 「解釈」が「間違っている」と言えるか
- 「気分」や「体調」という要素を無視できない
- 批評には無数のレイヤーが存在する
- 他者とのディスコミュニケーション(断絶)を含めたコミュニケーションがあるからこそ面白い
- 自作自演(rock/pops/classical)
- 音楽がいったん「楽譜」になれば、それを演奏する人は「他者」書いたものを再現できない
- 音をいかに捉えられるか
- 作者インタビューは信用できない
- 作者は最良の解釈者ではない
- 楽譜が作品のどこまでを指し示すのか 大枠→即興 全て→電子音楽
- 楽譜は記憶からの解放をもたらしたがリテラシーが必要になった
- レヴィ・ストロース
- 無文字社会の記憶
- ものをどんどん忘れてしまう
- 記号の発明→読み/解釈が可能/一度も聞いていない曲でも再現できる/長いものを作ることができる/編曲の自由度が向上した/楽譜はかつてレコードのように流通していた /複雑(構築性)の向上/オートメーション(印刷物による流通)グーテンベルク以前の楽譜は大きく、一枚の楽譜を数人で見て歌う→ピアノの発達もあり、パート譜を予約販売する形式に移行していく→前に戻ることが易しくなる
- 音楽とは時間と共に動いていく建築である(ex. カノン、フーガといった形式)
- アジア・西欧の共通
- 口頭伝承(口伝)
- 伝統、スタイル(ロシヤピアニズム、ショパン)
- 師弟関係
岸野「作品化とは、自分が麻酔を打たれて手術台に上るようなもの。作曲家が仮死状態になること」
小沼「バッハの楽曲は全てアドリブ(即興)であり、それが楽譜化され、作品になった」