読書に合う音楽 ―ハイドン、スカルラッティ、そしてドトール店内のBGM

自室で本を読むときにはたいてい小さめのボリュームで音楽をかけている。ことしの前半はハイドンのシンフォニーにたいへんお世話になった。ハイドンの音楽は、バッハのそれよりはずっとくだけた調子でありながら、明晰で、作曲家のくだらない自意識などみじんも感じられないところが読書に合う。

ことしの後半はスカルラッティのピアノ・ソナタをよく聴いている。スカルラッティもとても良い。とくにホロヴィッツの演奏が素晴らしく、好んでかけている。スカルラッティの音楽もシステマティックにできているが、そこまで無機的でなく、嫌味でないほのかな情緒も感じさせながら、作曲家のつまらないエゴやプライドなど毛頭感じさせないところがやはり読書にぴったりする。

たまに町に出て、仕事帰りの途中などにドトール・コーヒーにしけこんで長時間読書に勤しむときがあるが、ドトールのBGMの選曲はじつにぼくの好みに合う。きちんと対価を払って選曲家に仕事をさせていることが流れてくる曲のセレクションから伝わってくる。手を抜いていない洗練されたポップスが多いが、けっこうバックビートの効いたファンキーな曲もかかっている。音量を間違えるとドトールの店内がダンスホールに早変わりしそうだが、そんなことはけっして起こらない。店員は礼儀正しくTカードの所持の有無を、顧客に訊ねている。おそらくあす世界が滅びるとしても、彼らは顧客がTカードを持っているか否かを確認するだろう。それこそがドトール精神に則った顧客対応基準なので仕方がないのだ。ぼくはあらゆるポイントカードの所持を拒んでいるので、毎回Tカードの所持を確認されることだけがドトールのサービスにおいて不満だが、調子に乗ると270円のアイスコーヒーで6時間も店内に粘りながら追い出されたこともない―たいていは2,3時間で退店するが―ユーザー・フレンドリーなドトールをこんごも断固支持していくつもりである。ドトールよ永遠なれ!そしてぼくの読書のますます捗らんことを!!