40回目のエイプリルフール

2020年の4月1日を迎えた。新年度というやつだ。新年度になり、ぼくは無職になった。先月はわれながらよく働いたと思う。しかし1か月の短期契約の派遣労働だったから、また職探しをせねばならない。そんなことを考えながら納豆ご飯を食べる。ぼくは毎朝必ず納豆ご飯とみそ汁を食べる。生卵があれば生卵を納豆に加える。ねぎやカツオブシ、海苔もあるといっそうよろしい。

 

8時過ぎに起きたので午前中が長い。食後はベッドのうえでスマフォゲームに興じる。しかしそれも1時間くらいすると飽きてしまう。ゲームはやめて思い切って台所に行き、早めに昼食を作ることにした。焼きそばだ。ちょっと柔らかめのどちらかというと蒸しそばになってしまったが、やさしい味に仕上がった。両親が満足そうに食べていたのでよしとしよう。

 

昼食後は自室に戻って、ひとやすみする。ぼくはヘヴィスモーカーなので、食後に熱いコーヒーとたばこが欠かせない。時代遅れの習慣だが、カフェインとニコチンによって慰安を得ていることは否定できない。単なる薬理的な依存ではなくて、これは精神的な依存だし、行為依存でもある。そういったことはすべて分かっているが、コーヒーとたばこを絶とうとは思わない。外の喫茶店で読書に励むときもこの二つは必須だ。といってもこれからは喫茶店でたばこが吸えなくなるかもしれない…。ぼくにとってはますます生きにくくなるので大変迷惑な話だが、たばこを吸っているだけで白い目で見られることも多い昨今、仕方が無いという思いも半分くらいある。

 

一服し終わったあと、また階下に降りて風呂掃除をする。浴槽と浴室のタイルを念入りに洗う。いま住んでいる実家は両親が15年ほど前に建てかえたものだが、浴槽が広くて足を伸ばして入浴できる点はとても気に入っている。ぼくは胴が長く、身長も177cmあるので、なかなか足を完全に伸ばして入浴できる浴槽はすくないのだ。とくに仕事から帰ってくると、ほとんど一日中座業のため、脚がむくんでいる。それをゆっくり熱い湯のなかでもみほぐすのが至福のときだといえるだろう。

風呂掃除をしたあと、母が車を出してくれたので隣町のグリーンガーデンへ行く。ここはショッピングセンターのようなもので、ぼくの目当ては100円ショップだ。がらがらの店舗に入り、事務用品の棚からA4(角形2号)のクラフト封筒を買う。税込みで110円。しかし、13枚も入っている。5枚くらいでいいので60円で売ってほしいと思うが、黙ってレジで精算する。レジのおばさんもマスクをしていて客も少ないのでだるそうに接客される。仕事にはある程度の忙しさとリズムが重要だと思いつつ、隣のドラッグストアに行き、歯ブラシを買う。外は小雨が降っているが、じき止むだろうと思い、傘を差さずに母とは別れてグリーンガーデンを出る。

家に帰ってから、U-NEXTの無料トライアル(1か月)に加入したので、映画を観る。まず、大島渚監督『東京战争戦後秘話』(1970年)である。この作品の脚本には個人映画作家原将人が本名の原正孝名義で参加していることもあり、20年ほど「いつか観たい」と思っていたのだ。撮影監督の腕がよいらしく、モノクロの映像がとても美しい作品だった。また、ヒロインが決して美人ではないが雰囲気があって魅力的に映っていた。もしかしたら、撮影監督と交際していたかもしれない、と妄想しつつ楽しんだ。

早めに入浴し、夕食のあとは、ケント・ジョーンズ監督『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年)を観た。80分余りの短篇だが、無駄なカットが1つも無い。同名の書籍についての有名映画監督たちのインタビューを交えながら、ヒッチコック映画の魅力を的確に評していた。内容についてはここには詳しく書かないけれど、ヒッチコックファンであれば心から愉しめるだろう。というわけで映画を2本観たので、わりと目が疲れてしまって午前1時過ぎにはベッドに入って寝た。そんな40回目のエイプリルフール。ぼくが今年の9月で40歳になるなんて、冗談のような気がするが、それが現実だ。すこしは世渡りのスキルを向上させたいものである。