特別展:北斎展@東京国立博物館



 北斎の晩年の号が、画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)であるというのを知り、天才に妙な親近感を覚える。平日であるにもかかわらず、混雑。300点以上の作品を観るのに、へとへとになったが、実にカネを払って観る価値のある展示だった。好きな人は何度も足を運ぶのだろうな、としみじみ感じながら建物を出ると、晩秋の日はもう傾き始めていた。
 ひとつひとつの作品について感想を云うのも悪くないが、会場に集まった作品全体が、大きなエネルギーのかたまりであるように感じられた。初期の浮世絵風のタッチから、徐々に力強く表情のある作風に変わっていくのが素人目にもわかって楽しい。そして、江戸時代の芸術のベースにある、漢籍や和歌などについて、じぶんがちっとも知らないのだな、ということも併せて強く感じた。ことしはいろいろ画を観に行ったが、その中でも作品の量、質からいって一番の感銘を得た。